不思議の国のカイト君 4 ふと、前方に広い庭園が見えてきた。 庭の入り口には大きな薔薇の木が植わっていた。 見事な白薔薇が咲き誇っているというのに、四人の子供が赤いペンキで白い花びらを赤へと塗り替えている。 快斗が子供たちへと近づくと何やら話し声が聞こえていたのだった。 「気をつけろよ、光彦!ペンキがかかったじゃねーか!」 「僕じゃありませんよ!」 女の子が二人に男の子が二人。 四人ともトランプのマークの入った服を着ている。 ペンキがかかり、服の一部が赤く染まってしまった大柄な男の子はもう一人の子に突っかかっている。 「もう、ケンカしてる場合じゃないでしょー!」 黒髪のショートボブの女の子の言葉に二人の動きは止まる。 「だって、光彦がよ〜」 「歩美ちゃん・・・・」 大柄な体格の元太はスペードの7。そばかす顔の光彦はスペードの5。 カチューシャを付けている歩美の番号はスペードの2。 「元太君、光彦君」 「「すみません」」 まさに鶴の一声といった感じだ。 そんな三人の様子に茶髪の女の子が淡々と声を掛ける。 服はスペードの3。大人びた感じの子だ。 「早くしないと女王が来ちゃうわよ」 その言葉に三人は状況を思い出したらしく大慌てになった。 「大変だー!」 「こんな事してる場合じゃありません!」 「急がねーと!」 だが茶髪の女の子だけは他の慌しく作業を再開した三人とは裏腹に持っていた刷毛をペンキの缶の中に入れ、快斗の方へと向き遣った。 「何か御用かしら?」 「いや、何してるのかなと思ってね」 快斗は声を掛けられずにいたため、ずっと覗き見をしていた事になるのだ。 少女は肩を竦め、見れば分かるでしょう?と言った。 「何で、赤いペンキで塗っちゃうのさ」 折角綺麗な白薔薇なのに。 「ハートの女王に赤薔薇を植えるように命令されたのよ」 それなのにいざ咲いてみたら薔薇の色が白かったのだ。 命令違反をした事になってしまう。 「それだけで?」 「この国ではハートの女王の言葉は絶対よ」 逆らえば死刑、首を切られちゃうのよ。首切りの好きな女王だから。 「そりゃ、すごい」 他人事であるため、快斗の言葉はどこか軽かった。 「手伝って欲しいのだけれど」 少女は哀と名乗った。 「私達の身長じゃ、上のほうまで届かないのよ」 哀の頼みに快斗は恭しく頭を垂れる。 「麗しのレディの頼み、もちろん構いませんよ」 快斗は哀の手から赤いペンキの缶を受け取り、もったいぶったように掲げる。 他の三人の子達も何時の間にか作業を中断し、快斗の動向を見守っていた。 「ワン・・・トゥー・・・スリー!!」 快斗の言葉と共に煙が沸き起こり、子供たちは思わず目を瞑る。 煙が引いた時、白薔薇だった木は全ての花が綺麗に塗られ、まるで最初から赤薔薇であったかのようだった。 子供たちは歓声を上げ、快斗は出来に満足げに頷いた。 高らかに鳴ったラッパの音に三人は反応した。 「大変!ハートの女王が来たよ!」 歩美はそう叫び、光彦と元太は慌ててペンキの入った缶と刷毛を隠した。 ただ、哀だけは全く慌てる事は無く落ち着いて行動していたのだが。 ハートの女王と呼ばれている人物が近づき、四人はそろって頭を下げる。 快斗は近づいてくる気配に振り返ろうとして――・・・ 「おーっほっほっほっほっほ」 快斗の耳に高らかな笑い声が聞こえてきたのだった。 非常に聞き覚えのある高笑いだった。 |
トランプの兵隊ず登場。 ちびっこはかわいいなぁ・・・。 当サイトでは全く登場しない少年探偵団です。 これが最初で最後かなぁ・・・(遠い目) 次で終わり。ついにハートの女王登場。 |