知らなかったでしょ
実は私、魔法使いなんだよ
空は飛べないけど・・・
でも 魔法は使えるよ
私の魔法はすごいんだから!
快斗だって一発でかかっちゃうんだからねっ
魔法使いと無敵の呪文
日誌を先生に提出に行ったら、いろいろ雑用を頼まれてしまった。
結局、全部終わったのは五時過ぎになってからで。
窓からさす西日がまぶしい。
―――ガラッ
「・・・・・!・・・・・」
かばんを取りに教室に帰ってきたら、
他に人がいて、青子は少し驚いた。
「快斗・・・?」
その人が寝ている席は間違い無く快斗の席で。
ひょいと覗き込んだら、やっぱり快斗だった。
「おーーいっ」
呼びかけてはみたものの。
快斗はまったくの無反応。
どうやら完璧に熟睡モードに入っているらしい。
(なーんて他の人は思っちゃうんだろうけど)
付き合いの長さを甘く見ないでもらいたい。
(快斗が物音に無反応って時点で寝たふりってことはバレバレなんだからっ)
なんといっても怪盗キッドなのだから。
快斗=キッド
それは変えようのない事実。
ならば。
青子=魔法使い
少しは、信じてくれてもいいんじゃない?
(それなのに快斗ってば・・・・・)
昼間のことを思い出す。
私が魔法使いだと言ったときの快斗のあの反応。
ああ、もう!
思い出すだけで腹が立つ!
さて、どうしてくれようか。
昼間、さんざん馬鹿にしてくれたクラスメイトを。
副業が怪盗のおさななじみを。
ここで寝たふりをしているアイツを。
魔法を・・・魔法をかけてしまおうか。
自分が知っている唯一の魔法を。
あの、無敵の魔法を―・・・
にやり と顔に笑みがうかぶ。
コホンッと咳払いをひとつして、心を落ち着かせる。
外はもう夕暮れ。
もう少しで、夜がはじまる。
青子は静かに呪文をつむぎ出す。
「太陽と月の間、昼と夜の狭間で」
快斗は相変わらず、机につっぷしたまま。
「今、私はあなたに魔法をかける」
開いている窓から風が入ってくる。
青子の、そして快斗の髪を揺らす。
ゆっくりと、青子は快斗の元へと近づく。
「次に目が覚めたとき」
ささやくように言葉をつむぐ。
「あなたは、私を・・・・・」
私を。
あなたは。
「・・・・・好きになる・・・・・」
そう言いながら寝たふりの快斗の頬に、そっとキスする。
くんっと髪が引っ張られるのを感じ、青子は快斗の顔を見つめる。
快斗がもそもそと動き、上目づかいでこちらを見る。
ほらね、寝たふりだった。
「その魔法になら、もうかかってマス」
青子からの視線を外しながら、快斗はつぶやく。
心なしか快斗の顔が赤い。
珍しい。ポーカーフェイスが崩れてる。
「すごいでしょ?私の魔法」
えっへん!と威張ってみる。
「オミソレシマシタ」
窓から夕日が差し込む放課後の教室の中で、二人はくすくすと笑い合う。
そして、二人は静かに口付けを交わす――――・・・
天下の大怪盗をもトリコにしちゃう
無敵の呪文 恋の魔法
さあ、
あなたに魔法をかけましょう
END
初めて書いた快青小説です。
快青小説の中で一番ラブ度が高い気がする。・・・なぜだ。
この話のみ、青子は快斗=キッドと知っています。