流れ星を見たら願い事を三回 三回言えれば願いは叶う 星に願いを 星空の中、一筋の箒星。 「―――あっ!!」 「どうかしたのか?」 隣を歩いていた青子の突然の声に快斗は問い掛ける。 学校の帰り道。久しぶりに青子に付き合わされた買い物帰り。 最近は日が落ちるのが早く、まだ午後6時過ぎだというのに辺りはすっかりと暗くなっている。 青子は先日買った新しいクリーム色のマフラーを。 快斗は「K」と刺繍されている母親特製の緑色のマフラーを巻いている。 青子の様子に慌てて周りを見渡すが特に変わった気配もなく、快斗は訝しげに青子を見遣った。 「ううん、違うの。今、流れ星を見つけたの」 だからつい声が出ちゃっただけ。 青子は快斗の無言の問いかけに手を振り、慌てて否定をする。 「流れ星?へぇ、珍しいな」 青子の言葉を聞き、快斗も空を見上げるがすでに星は流れた後である。 「うん。綺麗だったよ」 もう一回流れないかなー。 期待の篭った眼差しで空を見上げる青子に、快斗は口元を綻ばせる。 「流れ星って『三回願い事を言えば叶う』って言うよね〜」 「らしいな」 青子は昔を思い出したのか、懐かしそうに笑う。 「小さい頃、どーしても三回言えなくて泣いちゃったんだよねー」 「へー。お前やった事あんのか?」 「え。快斗ないのぉ?」 信じられないと言外に言う青子に快斗は眉を顰める。 「やらねーよ。そんなオトメちっくな事」 「『オトメちっく』って・・・。いいじゃない青子は女の子なんだから」 「オンナノコねぇ・・・」 「何よっ!」 「それにしては・・・・」 言葉と共に青子を頭から足の先まで何度も往復し彷徨う視線。 快斗は腕を腰に当て、深く深く溜息を吐く。 そんな快斗の様子に青子はふるふると拳を震わせる。 「〜〜っ何が言いたいわけ・・・っ!!」 「いえいえ。オレの口からはとてもとても・・・」 快斗の言葉に青子は鞄を投げつけるが、難なくキャッチされ、それがまた青子の癪に障った。 「避けるなーー!!」 「無茶な事言うなよっ!」 青子はぶんぶんと鞄を振り回すが快斗はひょいひょいと簡単に避けてしまう。 快斗の動きに合わせてマフラーの先も動くが流石ほどけたりはしなかった。 すぐに息が上がってしまい、青子は肩で息をする羽目になってしまう。 「・・・疲れた・・・」 息も切れ切れの青子に快斗は呆れる。 「ムキになるからだぜ?」 「快斗のせいでしょっ!!」 けらけらと笑う快斗を見ていたら、なんだか馬鹿馬鹿しくなって。 青子も一緒に笑ってしまった。 「青子がオンナノコだって事はオレが一番良く分かってるって」 ふと、唐突に笑いが途切れて。 とても優しい目で見つめてくる快斗に青子は驚く。 「・・・・・・快斗?」 ゆっくりと近づいてくる快斗の顔。 どきん。と心臓が高鳴って。目を閉じる事さえ出来ずに。 唇に柔らかい感触。 「青子がオンナノコじゃなかったら、オレこんな事しないしな」 ぱきりと音が聞こえそうなウィンクがきまっていてとても格好良い。 青子の胸の高鳴りは止まらなくて。 それに。と続く快斗の声が青子の耳に甘く響く。 「青子が願うんなら、なんだって叶えてやるよ」 オレは不可能を可能にするマジシャンだしな。 どこか楽しそうに目を細めて言う快斗を青子はなぜか正視出来ない。 「だから星ばっか見てねーで。オレを見てろよ」 ただ、顔を真っ赤にしたまま、俯く事しか出来なかった。 |
アップする機会を逃してました。 冬もそろそろ終わりそうなので、急いでアップ。 オンナノコ云々の下りは、ちゃんと女の子として意識してるよって事です。 |