+++under the rainbow+++ 7月に入り、梅雨なのかどうなのか良く分からない天気が続いたかと思えば、 その後一週間位良い天気の日が続いたりと、全く安定しない日々になっていた。 この日も昼過ぎから降り始めた雨は放課後になっても止む事はなくて。 友人達とゲームセンターへ入っているうちに止んでくれる事を願っていたのだが その願いも虚しく、相変わらずしとしとと雨は降り続いていた。 快斗は雨の中、一刻も早く帰ろうと駆けていた。 最もゲーセンから近い友人の家へ押しかけてゲーム大会を開催するという案も出たのだが、快斗は丁重に断り家に帰る事にした。 傘は仲間内でも一本しかなかったのでさすがに貸してくれとは言えず、こうして雨の中走り帰る事になったのである。 あまり効果はないが鞄を頭上に翳し、水溜りを器用に避けながらも、全くスピードは緩めず家路を急いでいる。 靴が水を跳ね、ぱしゃぱしゃと音を立てている。 (くっそー。降水確率10%って言ってたくせにー!!) 快斗は内心で朝のお天気お姉さんを恨むが、こればっかりはどうしようもない事である。 遅刻しそうで慌てていたため折りたたみ傘を持ってくるのを忘れたのは快斗だ。 すぐには止みそうにない色の空を頭上に翳した鞄の下から窺う。 (この分じゃ、来週の仕事も雨降ってかもなー) 仕事の日は出来れば晴れている事が望ましい。 天候が悪ければ盗んだ宝石を返すのもその分遅くなる。 宝石の返却が遅れれば、またあの幼馴染の機嫌が悪くなる。 そして、あの幼馴染の機嫌が悪いと必ずと言っていいほど被害を被るのは快斗だ。 素晴らしい悪循環だ。 ・・・雨の日は碌な事が無い。 そんな事を考えながら公園の横を突っ切っていた、その時。 「――快斗?」 予期せず突然掛けられた声に驚き、道路にあった視線を上げると、そこには100M程先にあるタバコ屋の店先で雨宿りをしている青子の姿が目に飛び込んできた。 快斗は返事もそこそこに青子が雨宿りをしているタバコ屋の軒下へと駆け寄った。 「ふー。酷い目にあったぜ・・・」 制服に付いた水気を払うが、すでにじっとりと濡れていて大した効果はない。 「はい、ハンカチ」 「サンキュー」 左手で鞄を持ち、空いた右手でハンカチを差し出す青子に礼を言って受け取る。 まずは顔を拭いている快斗の耳に青子の残念そうな声が聞こえる。 「快斗もかさ持ってないのかー」 「今日はそこまでは仕込んでなくてね」 ハンカチで首回りを拭きながら快斗は答える。 「いい天気だって新聞に書いてあったしねー」 しかたないか。と青子は快斗に笑いかける。 「ま、次回に乞う御期待って所だな」 「楽しみにしてるね」 そこで会話がふと途切れ沈黙が訪れる。 「・・・・・」 青子はちらりと快斗の方を盗み見る。 快斗は雨に濡れた髪をぐいっと掻き揚げた。 その動作に一瞬目が奪われる。 見慣れているはずの快斗の横顔にドキリと胸が高鳴る。 (そういえば最近、快斗の顔をまじまじと見る事なんて無いな) ぼんやり思いながら青子の視線は快斗の方に向いている。 改めて快斗を見てみると、案外整った顔をしていて。 少し遠くを見ている瞳が綺麗だな。なんて思っていたら、突然。 くるりと快斗が青子の方へ体を向けた。 視線も逸らすことなく青子の方へと合わせている。 再び青子の胸がドキリと鳴る。 「あの・・・さぁ・・・」 少し言いにくそうな快斗の様子に青子は焦ってしまう。 「な、何?」 「さっきからじろじろ見られてて、ちょっと・・・居たたまれないんだけど・・・」 その言葉に青子ははっとする。 「ご、ごめん!」 そう言って、慌てて正面を向く。 先程と比べ、雨は弱まりつつあった。 「すっかり止んだな」 タバコ屋の軒下から出て、快斗はのびをする。 雨は止み、雲と雲の間から日が差している。 雨に濡れた公園の木々が日の光にキラキラと輝いている。 それが眩しくて快斗は少し目を細める。 水溜りだらけのアスファルト。 器用に避けて青子の方へと向きを変える。 「帰るか」 にかっと笑う快斗をなんだか見ていられなくて青子は視線を空へと向ける。 青い空。 まだ少し残る雲。 「―――あ」 そこには一筋の虹が掛かっていた。 完全な半円を描いてはいないが、雨が止んだ事により生まれた七色の虹。 「快斗!虹、虹!!」 慌てて指を空へと指し快斗へ教える。 「へぇ。珍しいな」 「すっごいキレー!」 なんだか得した気分〜〜♪ 無邪気に喜ぶ青子の姿にふと快斗の心が動く。 「すごーい!ちゃんと七色あるー」 虹に目も心も奪われている青子の傍に音も無く近づく。 ふと目の前に出来た影に青子が顔を上げた、その時。 ――優しく唇を重ねる。 「ちょっ・・・快斗!!」 「何だよ?」 「何って・・・!こんな所でっ!」 真っ赤になって快斗から離れようとじたばた暴れる青子の姿に快斗は笑みを浮かべる。 青子の抵抗など、さらりと無視する。 「誰もいねーし、誰も見てねーよ」 そう言って快斗は再び青子の唇に優しく影を落とす。 快斗の頭の上には七色の虹。 さらに真っ赤になりながら青子は大絶叫をする。 「そーゆー問題じゃないでしょ――!!」 雨上がり、虹の下でキスをしよう。 |
じゃあどんな問題なんだとか、青子のハンカチはどーした等、 つっこみは受け付けませんので、あしからず。 珍しく天気が雨なんで気に入ってます。 雨上がりのシーンとかは書いてて楽しかったです。 |