+++6月の花嫁+++





「蘭ちゃん、キレイだったねー!」
結婚式も無事終わり、西日がまぶしい中、うっとりと、未だ夢見心地の青子は受け取ったブーケを大事そうに抱え込んでいる。
「ん、そうだな」
快斗の白いスーツは西日を受け、朱色に染まっている。
両手は頭の後ろで組み、嬉しそうな青子の隣をゆっくりと歩いている。
でもなーと快斗は組んでいた腕を外す。
「最初の白馬はひったくり。前の服部は傷害。んで今回の新一は殺人。
・・・ホント事件を呼ぶ探偵だよなぁアイツら。しかもだんだん酷くなってくし」
指折りしながら、快斗はあきれたように声を出す。
「しかも三人とも新郎が率先して事件に行っちまうしよ」
俺のマジックショーは三回とも場繋ぎだし。
ぶちぶちと文句を言う快斗に青子はにっこりと笑う。
「ま、そうだけどさ。快斗もかっこよかったよ?」
「ふ。当然だ」
「・・・なんか褒めて損した」
「いやいや。もっと褒めてくれてかまわんよ、青子クン」
「二度と褒めない事にしよ」
「・・・いや、褒めろよ。マジで」




青子の腕の中のブーケが風にのってふわりと香る。
「本当にキレイだったなぁ・・・」
こぼれるようにぽつりと呟いた言葉を快斗が聞き逃す事はなく。
「ま、式の主役は花嫁だしな〜」
「そうだよね!花嫁さんってステキだよね!」
自分の言葉にこれほどの反応が返ってくるとは思っていなかった快斗は 青子に少し圧倒される。
「何、青子もなりたいのか?」
「そりゃ、花嫁さんは女の子のアコガレだしね」
アコガレねぇ・・・と快斗は一人ごちる。
「だって蘭ちゃんからブーケ貰えたし、次は青子の番なんだからっ!」
蘭から手渡されたブーケをぎゅっと握り、青子は言う。

「ふーん。じゃ、青子もなるか?」

その声があまりにいつもと同じであったため、青子は一瞬反応が遅れた。
「え?」
「だから、花嫁」
「へ?」
瞳が、口調が、雰囲気が、あまりにいつも通りで。
あっけにとられている青子の鼻を快斗はぎゅっと摘んだ。
「なーにバカ面してんだよ」
「ちょ・・・快斗、それってもしかして・・・」
やっと動き出した青子の脳にペースを合わせる事なく、追い討ちの様に畳み掛ける。
「なるのか?ならないのか?」
「なるに決まってるでしょっ!!」
真っ赤になりながら大声で即答する青子に快斗は満足げに頷く。


いつの間にか青子の髪を結い上げていたリボンは快斗の右手へと移動していた。
オレンジ色のリボンがふわりと風になびく。
リボンを揺らす風が同じように青子の髪も揺らしている。
太陽の西日を浴びながら快斗はこちらを向いていた。
その顔はどこか楽しそうで。


「じゃ、決まりだな」






END




その後

「すげー緊張してたんだぜ?」
「うそだー!全然余裕っぽかったくせにー!」
「バーカ。何言ってんだよ」

「ホレた女にプロポーズすんだぜ? 緊張しないわけねーだろ」



Happy Wedding!!