どんなに好きな音楽だったとしても睡眠を妨げる曲は大嫌いだ。 good morning! 「う〜〜〜〜」 快斗は布団の下からのろのろと手を伸ばし、携帯を掴む。 誰からの電話なのか確認もせずに、通話ボタンを押す。 「もひもひ」 『あ、快斗!』 第一声がまだ寝ているが、実際寝起きなのだからしょうがない。 やっと出たとばかりに勢い込んで話し出そうとする声を聞いて通話相手が誰だか分かった。 声といい、話し方といい、近所の幼馴染さん(17)だ。 相手が分かった時点で快斗にとっては睡眠が第一重要課題へと移る。 何も言わずに容赦なく電源ボタンを押して携帯を物言わぬ物体へと変化させた。 少し間をおいて再び携帯電話の音楽が鳴り始めた。 おそらくというか、100%青子だろう。 電話なんぞに睡眠を邪魔されたくない。 むしろ電話なんかかけてくるなという感じだ。 電源を切っておけばよかったと後悔するも、もう遅い。 電話は鳴り始めてしまっているのだから。 放って置いても鳴り続ける携帯に焦れた快斗は再び携帯の通話ボタンを押した。 「只今快斗君は一身上の都合により電話に出ることができません。御用の方はピーという発信音の後にお名前とご用件を・・・」 お入れください。と最後まで言う事は出来なかった。 『起きなさいっ!!快斗ーーーっ!!!』 青子の大声が携帯越しに快斗の脳天に突き刺さる。 「なんだよっ!うるせーなーっ!!」 大声に思わずベッドから起き上がるも、やはり布団が恋しくて再び沈没する。 『あんたねぇ・・・。今何時だと思ってんのよ!』 「いまぁ・・・?」 ごそごそと枕もとにあるはずの目覚まし時計を左手で探し当てる。 手元へと持ってきて、その表示を見てみると。 「7時45分」 『違うわよ!』 すぱりと返された。 『よーく見なさい。よーーーっく!!』 よーく?快斗はまだ少し眠い目をごしごしと擦りもう1度目覚ましの時計板を見つめた。 短針が7と8の間にあると思ったそれは。 「はち・・・・っ!!!」 8時45分だった。 「もっと早く電話しろよ、バーロ!!」 快斗は電話のむこうにいる青子に愚痴った。 時計の針が示す正しい時間を知り、現状を理解した快斗は眠気が一気に吹き飛んだのだ。 手に持っていた目覚ましを放り出し、ベッドから飛び起きた。 快斗は肩と顔で携帯を器用に挟み込みながら、シャツのボタンをとめている。 『着信履歴見なさいよ。言っとくけど、これ6回目の電話よ』 自業自得でしょっ! 大変厳しいお言葉と共にぶちりと携帯が切れる。 ふと見るとなにやら居間のテーブルの上に紙が置いてあった。 手にとってみるとそれはおふくろの書置き。 『起こしたんだけど、起きなかったわ』 勘弁してくれよ、おふくろ・・・。 起きなかったんなら起こしてねーって事だろ? 嘆いていても状況は変わらないが、嘆きたくもなってしまう。 今日で連続1週間の遅刻。 流石の先生も堪忍袋の尾が切れてしまう。 おそらく切れたことだろう。 溜息をつきながら快斗は家を飛び出した。 がらりと音を立てて快斗は教員室のドアを閉じた。 思った通り1週間連続の遅刻に先生の堪忍袋の尾が切れ教員室へ呼び出されたのだ。 普段温厚な先生とは思えないほど、くどくどとお小言をいただいた。 「はぁ・・・」 やっと開放されたという安堵から自然と溜息が漏れる。 教員室の前で快斗を待っていた青子は快斗の重い溜息に笑いがこみ上げる。 「ほーんと快斗って朝弱いよね〜」 「うるせえよ」 むっとするも事実なので快斗は言い返せない。 「起こしても全然起きないっておばさん嘆いてたよ」 「しゃーねーだろ」 そうだ。とばかりに青子はぽん!と掌を叩いた。 「ねぇ、明日も今日みたいに青子がモーニングコールしてあげようか?」 「・・・たのむ」 「あ。じゃあいっその事、直接起こしに行ってあげようか?」 「・・・・・・・は?」 ナイスアイデアだと言わんばかりにうんうんと頷く青子に快斗は焦る。 「おいおい・・・」 「そーだ。ついでに快斗の分の朝ごはんも作ってあげるね」 にこりと笑う青子に快斗は何も言えなくなる。 何しろやる気満々になってしまっている青子には何を言っても無駄だ。 快斗は長い付き合いの中でその事は充分に理解していた。 「・・・・んじゃ、よろしく」 内心で溜息をつきながら快斗はそう言うしかなかった。 しっかし。 いくら幼馴染とはいえ、朝っぱらから男の部屋に入るなよなー・・・。 まぁたしかに、ある意味一発で起きれるだろうけどな。 「よーし!腕によりをかけておいしーい魚料理作ってあげるね♪」 「それだけは、却下だっ!!」 |
300ヒットを踏んでくださった響都杏さまリク。 「幼馴染なノリの快青」です! 幼馴染の定番、モーニングコールです! 青子のお弁当を快斗が横取りするのとどちらにしようか迷いました。 ・・・もしかして私、幼馴染を間違って理解してますか? なにはともあれ、響都さまありがとうございました!! |