とある昼休み





昼休みも残り5分となり、教室に生徒が集まってきだした。
ざわざわと騒がしい教室の中で、新一はぐったりと机に突っ伏した。
「だ――。マジで疲れた・・・」
次の授業の教科書は端に寄せられ、開いたスペースに新一は突っ伏す。
これから授業が始まるがはっきり言って、たるくてやっていられない。
そんな様子の新一を見た蘭は溜息を吐く。
「新一はムキになってやりすぎなのよ」
蘭はさきほどの休み時間に新一がハットトリックを決めた際、とれてしまったブレザーのボタンをつけている。
別に新一に頼まれたわけではないのだが、取れているボタンが気になって蘭の方から申し出たのだった。
「だってサッカーだぜぇ?手なんか抜けないっつーの」
元サッカー部としての沽券に関わる!!と断言する新一を蘭は軽く流す。
「はいはい、そうね」
蘭は新一の方をちらりとも見ずに言う。
視線はボタン付けをしているブレザーへと注がれたままだ。
「・・・・・・・馬鹿にしてねぇ?」
「してない、してない」
「・・・・・・・・」
いいけどよ、別に。
ぶつぶつと呟く新一の声は近くにいる蘭の耳に届き、蘭はくすりと小さく笑った。



PPPPPPPPPPPPPPPPP

もう始業のチャイムが鳴ろうかという時に新一の携帯が着信を告げる。
「はい、工藤です」
新一の声の感じから蘭は相手は目暮警部である事を察する。
「わかりました。直ぐ行きます」
「・・・事件?」
「まぁな。ノートよろしく」
立ち上がり帰る準備をし始める新一にクラスメートも慣れていて、いまさら騒ぐ事はしない。
「今度何か奢ってねv」
「へぇへぇ」
蘭と軽口を言い合いながらも新一の手は止まる事無く、机の荷物をバッグへと運んで行く。
バックを肩に掛け、立ち上がる。
「じゃあな」
「ちょ・・・新一!上着!」
蘭はボタンが付け途中の新一のブラザーをまだ自分が持ってることに気付き、慌てる。
だが新一はさも今気付いたというように教室の出口で一度立ち止まると、蘭へと振り返った。
「家まで持ってきてくれよ」
ついでに夕飯は中華でよろしく。
一言付け加える事を忘れずに、新一はひらひらと手を振ると昇降口へと向かい駆けて行く。


「もぉ!」
蘭は腰に手をあて、怒っている時のポーズをとる。
いつもの調子の新一に蘭は内心諦めてはいるのだが、それでも文句の一つでも言いたくなるモノのが人間というモノだ。


蘭が諦めたように溜息を吐くのと、始業のチャイムが鳴ったのは同時だった。





―――午後の授業が始まる。



END





久方ぶりの新蘭。
ついに新蘭サイトを名乗るのを止めましたが、ちゃんと好きですよ(たぶん)
原作の方で2人の性格が少しずつ変わってるんで難しいというのが本音。