不思議の国のカイト君






どこまで進んでも一向に抜ける事の無い深い森の中、快斗は迷っていた。
白ウサギな青子をこの森で見失ってから適当に歩き回ってきたのだが。
さてどうしようか。
快斗は手を口元に置き、うーむ。と唸った。

道に迷った際の究極の選択。
右に行くか。左にいくか。

快斗の歩いてきた道は眼前で二方向に分かれていたのだった。





森に入る前に、緑色の服を着てキノコの上に乗っている白馬がいたのだが、こんなことなら無視して素通りせずに話し掛ければよかったのかもしれない。
偉そうな感じで水煙管をふかし、こちらは眼中にないようだったためナチュラルに無視したのだ。

・・・森の入り口まで聞きに戻るのは癪だしなぁ〜 。

そんな事を考えているとふとすぐ側にあった木から視線を感じ、快斗はそちらを見遣った。
すると、その木の枝の上には。



快斗は座り込んで頭を抱えたくなった。
「名探偵のぼーず・・・」
座り込まなかった代わりに出た言葉は力のあるモノではなかった。
「なんで、お前まで〜〜・・・」
木の枝の上に立ち、こちらを見てにやりと不敵に笑うそいつは。
数回しか遭った事はないが、なかなか手をやいた名探偵、江戸川コナン。
ただし。猫耳としっぽを生やしているが。

トレードマークの黒縁眼鏡にベージュのパーカー。焦げ茶の半ズボン。
頭からは紫色の猫耳、お尻からは同じく紫色のしっぽが生えていた。
両手はポケットに突っ込んだまま、時々ゆらゆらとしっぽを動かし、顔は先程からずっと不敵に笑っている。

「よぉ、名探偵!」
気を取り直した快斗は手をあげ声をかけてみるがコナンは相変わらずにやりと 笑っていた。
しっぽの動きにも変化は見られず、快斗はもう一度話しかけてみた。
「俺、どーも道に迷ったみたいなんで、どっちに行ったらいいか教えてくれねぇ?」
「それはどこへ行きたいか次第だな」
コナンはやはり笑ったままで、しっぽの動きも滑らかだ。
「そりゃ、どこだってかまわねーけど」
「ならどっちへ行ったって、いいじゃねーか」
「―――そーだけど。でもどっかには行きてーんだよ」
「ああ、それなら平気だ」
コナンはますます笑みを深くした。
「どっちへ行ってもどこかにはつくさ」
だめだ。話が通じない。
快斗は肩を落とし、大きく溜息をついた。

「こっちに行くと何があんの」
聞き方を変え、快斗は右の道を指差し問い掛けた。
するとコナンはゆらゆらと動かしていたしっぽで右の道を指す。
「こっちへ行くと帽子屋の家で・・・」
こんどはしっぽの先を左の道へと指す。
「そっちへ行くと三月ウサギの家があるぜ」
そうだ。ウサギで思い出した。
ウサギ。白ウサギを追っていたのだった。
「ふーん。なぁ、白ウサギがここを通らなかったか?」
「通ったかもしれないが、俺は知らない」
素っ気無い答えが返ってきて、快斗は口元においた手に力を加えた。
「じゃ、ハートの女王の所でまた会おうぜ」
コナンは一層不敵に笑うと、ぱっと一瞬にして消えたのだった。

「うーーん。マジシャンの俺もびっくりだぜ」
快斗はコナンが消えた後少し考えてから、ウサギ繋がりで左の道に行く事に決めた。







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チェシャ猫コナン登場。
私を飲んでっていう小瓶も涙の池もドードー競争も
公爵夫人とブタの赤ちゃんも飛ばして、いきなりチェシャ猫です。
あ、白馬は青虫。ナチュラルに無視したけど(哀れ)

次はお茶会。帽子屋と三月ウサギ登場。