×××coffee kiss×××







「キスって本当にレモン味なの?」


突然こんなことを聞かれた。

「・・・・・・・・・え?・・・・・・・」
「『え?』じゃなくて。
蘭達もうキスくらいはすませてるでしょ?」
固まってしまった蘭になおも園子は聞く。

「どうなの?」

「・・・・・な、なんで?」
とりあえず聞いてみる。

「ほら、
ファーストキスって『レモン味』とか言うじゃない?」
「・・・・何、それ」
「え?知らない?そういう話、聞いたことあるけど?」
「知らない・・・・・けど?」

「あるのよ!そういう話が!!
教えなさいよ。蘭の実体験だと『何味』なのよっっ!!」
園子は箒を小脇に抱え、指を蘭の顔にビシッと指した。
真剣なようで、どこか楽しそうな顔。

蘭の箒を持つ手に力がこもる。

からかわれているのは分かっている。
でもっっっ!!

「私にだってそんな『体験』ないわよっっ!!!」
つい大きな声で叫んでしまった。

いまは掃除中。
教室を掃除していたクラスメイト達が声のした方に一斉に注目する。

「・・・・・・あ・・・・・」
自分の声の大きさと皆の視線に気付き、蘭は真っ赤になってしまった。

その反応を見ていた園子は、ニヤリと笑いながら
「へえ〜〜〜蘭もまだなんだ〜 新一君も案外奥手ね〜〜〜」
と、しみじみ呟いた。

「そ〜の〜こ〜〜!!」
蘭が持っていた箒を振り上げた時、後ろから声がした。


「何?今の声」


「し・・・新一!!」
幼なじみで高校生探偵の工藤新一が、そこにいた。

「お前等、何の話してたんだよ。廊下にも響いてたぞ」
「えっ!!うそっっ!!」
蘭の言葉と共に掃除終了のチャイム。

固まってしまった蘭に新一が声をかける。
「帰らないのか?」
「・・・・・・・帰る・・・・・・・」
なんだか、すごく疲れた様な気がするのは、気のせいだろうか。


「じゃ、私は用があるから。先に帰って」
「分かった」
園子は別れ際に小さく「がんばれ〜」とささやいた。
「園子っ!!!」
「じゃあね〜」
「もうっ」
今日はこの親友に振り回されっぱなしだ。

一息ついて、蘭は下駄箱の方へ歩き出した。
新一は、園子の後ろ姿をしばらく見送ってからおもむろに口を開いた。
「・・・・・で、『がんばれ』って?」
「き、聞こえてたの?!」

少し早足に歩きながら新一の追求を躱す。
「なんでもないっ」

『?』という顔をして、それなら、と新一が聞いた。

「『体験』って何だよ?」
「だーかーら、なんでもないの〜〜!!」
叫びながら、真っ赤になるのが自分でも分かった。








新一の家に来るのは久しぶりだった。
「? 早く入れよ」
さっきから玄関を睨んだまま入ってこない蘭に、新一は声をかけた。
「あ・・・ う、うん」
新一に促された蘭はなんだか妙に緊張していた。
(もー、園子が変な事言うから意識しちゃうじゃない!!)



「コーヒーでいいよな」
「あ、私やるよ」
「いいって。それより物理の問題集開いて待ってろよ」
「はーーーい」
しばらくすると、コーヒーの良い香り。

「で、どこ?」
新一はコーヒーを手渡しながら、蘭に聞いた。
「ここなんだけど・・・」
「ああ、ここは・・・・・・」
コーヒーをすすりながら、答える新一。
「あ、待って。ケシゴム落とした」
まだ一口もつけていないコーヒーをテーブルに置いて、蘭はケシゴムに手を伸ばした。

その時―――
急に、バランスを崩した。


「きゃっっ!!!」
「蘭!!!」





・・・・ふわっ・・・・





(―――え?―――)


今、何かやわらかいものが唇にふれたような・・・・・?




ガタンッ!!!
さっきまで蘭が座っていた椅子が倒れた。




新一が手を引いてくれたおかげで、転ばずにすんだけれど。
目をつぶっていたため、蘭には何が起こったのかよく分からなかった。

「・・・・・・今」
何が起こったのか分からず、ふりかえると―――



そこには、真っ赤な顔をして口元を手で隠している新一が。

「新一?」
どうかしたの?
と、聞こうとして、思い出す。



さっきの柔らかい感触と、仄かにしたコーヒー味。





――――――もしかしてっっっっ!!!!


私は、新一に負けないくらい真っ赤になったと思う。
















『ほら!
ファーストキスって『レモン味』とか言うじゃない?』

園子の台詞を思い出す。



新一と二人で真っ赤に固まったまま
私が思ったことは、


・・・・・・・私は『コーヒー味』だ、ということでした。







×END×




在原の初コナン小説です。
恥ずかしい・・・。恥ずかしすぎる!
駄文すぎて読み返せない〜〜!
この頃のってやけにラブ度高いんだよねー。
砂糖が吐けそうですよ・・・。

あ、りおんさんから貰った新一バージョンは素敵です→こちら